時効の援用は口頭でもできるか
1 消滅時効の援用は法的には口頭でも可能
結論から申し上げますと、貸金業者等に対する消滅時効の援用は、法律上は口頭でもできます。
消滅時効の援用の方法については、特に形式が定められているわけではありません。
そのため、対面や電話で消滅時効の援用をする旨を伝えても、法律上は消滅時効の援用をしたことになります。
もっとも、消滅時効の援用をしたという事実が存在することと、その事実の存在を裁判所などの第三者に対して証明できることは別の問題です。
返済を滞納してしまった借金などの債務(貸金業者等からみた債権)は、消滅時効の援用をしない限りは消滅しないため、消滅時効の援用をしたか否かで争われた際に備え、第三者に対して証明できるようにしておく必要があります。
このような理由から、実務においては、消滅時効の援用には配達証明付き内容証明郵便を利用することが通常です。
以下、実務における消滅時効の援用について詳しく説明します。
2 実務における消滅時効の援用について
まず、滞納してしまっている借金などについて、消滅時効が完成しているかどうかを確認します。
具体的には、貸金業者等からの催促の書面や訴状、支払督促などに記載された内容から、最後の返済日(正確には期限の利益喪失日)から消滅時効が完成するまでの期間が経過しているかを確認します。
消滅時効が完成するまでの期間は、一般的には期限の利益喪失日から5年間ですが、一部例外として10年間のものもありますので注意が必要です。
確実に消滅時効が完成しているであろうと考えられる場合には、貸金業者に対し、消滅時効の援用の対象となる債権を特定する情報(管理番号、契約日、残元金、最後の返済日等)と、消滅時効を援用する旨の記載をした内容証明郵便を送付します。
訴訟が提起されている場合には、一旦答弁書に消滅時効の援用をする旨を記載して反論します(専門的には、訴訟における消滅時効の援用は「抗弁」と呼ばれます)。
多くの場合、貸金業者等側は訴訟を取り下げますので、その後、内容証明郵便で消滅時効の援用をしておきます。